いらっしゃいませ。

こんにちは。

当ブログ管理人、千葉県八千代市で「個別学習ヴァージャー」という塾をしているうかる~る・岡本と申します。 ここでのブログはまだ始めてから短いですが、少しずつ充実させていきたいなと思っております。学習塾の塾長をしておりますが、教育の話はほどほど(?)で、日々のうたかたをお気楽かつ皮肉交じり?に綴っております。一部の個人情報を除いては「ほぼノンフィクション」になっております。ブログがリアルへの架け橋になればいいなと思っております。どうぞよろしく。 For Non Japanese readers. Thank you very much for visiting my weblog.I am very happy to be visited. If you have time,please leave your comment.(^^) Ciao!

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2009/06/16

Chapter・4:鍋の具材

 いつの間にやら脳内鉄人シェフになっていた私に小さな現実の使者が尋ねて来た。彼は私を夢から醒ますように、その小さな体を子犬のように震わせていた。私は彼の呼びかけに応えることを余儀なくされた。他にすることもなかったことだし、震える子犬が傍にいる時に外れ馬券を見ながら嘆息をついているほどには、空気の読めない男でもなかったので。
 私は彼の震える体を手にとった。ディスプレイに表示されていた番号に全く記憶はなかった。かなり混んでいるエレベーターに乗り込むように、私は恐る恐る言葉を発した。私の耳に飛び込んできた声は、思い出そうとしてもうまく思い出せないあやふやな英単語のようだった。


 声の主は以前在籍していた学習塾に通ってきていた子であった。私の中で彼の顔と名前は一致していたのだが、声に対する記憶は全くといってよいほど残っていなかった。私は心の中で自分に対して悪態をつきながら、同時にそんな自分の感情をおくびにも出さずにその子との会話を始めた。
 彼と話をしながらも、私はまだ牛が反芻を繰り返すように、彼のことを何とか思い出そうとしていた。そんな状態であったから、彼とこの時に話した内容は蒲公英の綿毛のようにどこかへ飛んで行ってしまって、私は全く覚えてはいない。けれども、数日後から彼と一緒に大学受験を突破するべくタッグを組んだのであるから、恐らくはそういう話をしていたのだと思う。

 鍋の中にようやく具材がひとつ入った。

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